【LIVE REPORT】HERO、東名阪ツアー完結!17周年で語られた、20周年という未来への想い。「ここでもう一回、本気出す。俺たちが夢を叶える瞬間、是非一番近くで見ていてください。」

<東名阪ツアー2024「再会」Re:union TOUR FINAL>
2024年9月12日(木)Spotify O-WEST

HEROが、9月12日に東名阪ツアー2024『「再会」Re:union』のツアーファイナル公演をSpotify O-WESTにて行った。この日は始動から17周年を迎えた当日ということもあり、1階フロアはもちろん2階席までヒロイン(ファンの総称)たちで埋め尽くされ、多くの人と共に記念日を祝うと同時に、HEROがこの先の未来へ抱いている思いを共有する大切なライブともなった。

2024年に入ってからというもの、HEROは“もう一度”を合言葉に奮起した姿勢を見せている。正直なところ、昨年までの活動はスローペースだった。しかし今年2月に行った関東近郊ワンマンツアー『「再会」Re:start』に始まり、3年ぶりの開催となった今回の東名阪ツアーにも『「再会」Re:union』というタイトルが据えられていたことに加え、メンバーが着用している真っ白い衣装も心機一転を表すかのようで、それはどれも4人の意欲を示すシンボルとなっていた。

ライブは、SEに乗せて1人ずつステージへ登場し、「全員キメてこうぜ!」とJIN(Vo)が気合いの一喝を放つ“お馴染み”のオープニングシーンを経て、「「色合せの法則」」からスタート。真剣なまなざしで「最高の1日にすることを約束する」と宣言してから、人と人との繋がりを色に例えたメッセージ性のあるナイスチョイスな幕開けからしっかりと躍動感を帯びて、続いた「to you…」では観客が瞬時に肩を組んで圧巻の一体感を生み出していく。「アルコ&ピッツィカート」でも“楽しい”という感情が一番にくるものの、SARSHI(Gt)、YU-TA(Ba)、yusuke(Dr)が奏でる誠実なロックサウンドと、それを受けてフロアに鋭い視線を向けながら歌うJINの歌声によって生まれる音楽力の強靭さも、HEROを語るうえで欠かすことはできない。そして、YU-TAのベースがヘヴィに牽引した「罪と罰」で起こった、演奏を掻き消すボリュームで響くメンバーコールの声。その瞬間は今もなお多くの人がHEROを求めていることを証明するものであり、そう感じた矢先に歌い締めで「俺たちが、HEROです」と言い放った一連の様子が無性にグッと来た。

「こんばんは。平日なのに来てくれてありがとな!」と伝え、「今日は楽しめそうか?」とJINが語りかけたフロアには初めてHEROのライブに来た人も散見しつつ、男性ファンの姿も多く見られたことから「どうしてこんなに男が多いの!?」と若干いじり気味で触れる場面も。絶好調なMCも含め、誠実な音楽と心の底から笑顔になれる空間といった、序盤から実に“HEROらしいライブ”が繰り広げられていた。HEROには“定番”を強みにしてしまうポテンシャルがありながらも、新しい挑戦もしっかりと織り交ぜていく。直近でそれが楽曲として表れていたのが、8月にリリースされた「Prelude」だろう。「みんな、楽しんで帰ってくれ!」という言葉を添えて披露したこの曲は“序章”という意味を持つタイトル通り、冒頭で記したバンドが奮起したタイミングに相応しい1曲で、なにより4人から生まれるグルーヴが非常に心地よい。新曲ながらもJINがGOODサインを見せるほどの盛り上がりを見せた観客に贈る形で披露された「めっちゃ好き」では、“めっちゃめっちゃ〇〇めっちゃ好き!”とメンバーの名前に歌い替えてハートフルな空気に。一変して「笑わなかった少年」では、シリアスなテイストの楽曲ゆえにエモーショナルに届けていくステージの様子が一層際立っていく。

ここで「20周年も見えてきました」と、この日ひとつの要でもあったこの先について触れる場面があった。「20周年はZepp、やりたいと思う」とナチュラルに宣言し、「そんな願いを込めてこの曲を贈ります」と披露されたのは「星に願いを…」。離れてしまってもいつかまた出会ってしまう、そんな楽曲のフレーズがまさにHEROとヒロインの関係性を表しているようでもあり、ミラーボールが輝く元で直前のMCも相まってロマンチックさを増して届けられた。少しばかりセンチメンタルな気分になるも、すぐさま「Shall We Sing」でポップに導き、「「テノヒラ」」の冒頭にリリース当時タイアップをした作品を紹介するも掲載誌を間違えるという痛恨のミスも爆笑に変え、演奏が始まればこれぞHERO王道の曲展開が納得の威力を放ち、ドラムセットに楽器隊が集結するシーンにも通ずる“仲間の絆”がストレートに伝わっていく。さらに、「翼が折れて迷宮に迷い込んだ漆黒の天使」では、独特なタイトルコールに観客が「フー!」と謎のテンション感で応えるお決まりのスタートから大いに盛り上がりを見せた。

いよいよライブも終盤。「CRACKER」で勢いづけて、「ここをピークにしよう」と告げて突入したのは、クライマックスには欠かせない「人間定義」。ハードに白熱するこの曲では、いわゆる“煽りパート”でJINからのムチャぶりにヒロインたちが応えるセクションがあるのだが、この日は直前のMCで話題に出していた通り“だるまさんがころんだ”で観客を思いのままにした。はっきり言って、観客が肩を組んで“だるまさんがころんだ”をする光景は異様なのだが、こうした一体感の作り方においてHEROとヒロインたちは本当に天才的であると思う。ラストは、盛大に「でてこいや!」の掛け声も決まった「超過激愛歌~~Super Ultra Lovesong~」で、言わずもがな爆発力をもったハピネス空間で締めくくられた。

アンコールでは、まず「20周年は大きい会場でみんなと歌いたい」と伝えてたくさんの歌声が響いたバラード「カゾエウタ。」と、“手をつなぐ”というアクションで楽し気にジャンプした「セツナウタ。」を披露。そして、JINの口から感謝と共に語られたのは“これから”のことだった。

「この年になって、〈ここからまた夢みんのかい!〉って思うかもしれないんですけど、俺は夢を見た時に、絶対に叶えてきた。MASKでもZeppやったし、HEROもZeppやった。ここでもう一回、本気出す。俺たちが夢を叶える瞬間、是非一番近くで見ていてください。今日は本当にありがとうございました」

開演前にSNSでも緊張を吐露していたJINだったが、この日伝えるべき決意が大きかったことを考えれば納得でもあった。こうして最後に演奏されたのは、まさしくHEROとヒロインの掛け合いがあってこそ完成する、HEROにとってのアンセム的1曲とも言える「「ソプラノ」」。ラストのサビ前に演奏を引き伸ばすという稀なアレンジがあり、そのタイミングでJINは「ありがとな!さっき、俺たちと夢を見るっていう約束、絶対に守ってくれ!本当に、ありがとうございました!」と伝え、yusukeに合図したバンドインからライブを仕上げていく様には胸を打たれるものがあった。そしてこの曲にもある通り、“出会い”という人生における大きなきっかけ。その一つに心を豊かにしてくれるHEROとの出会いがあって良かったと、かみしめるエンディングでもあった。

VIPチケット所有者対象に特別なアンコールも行われたが、そこでも共通して伝えていたことがある。活動のキャリアが長くなるほど、“あとどれくらい”ということが脳裏をかすめることが多くなる。音楽活動に限らず、人生という広い視点においてもそれは言えるが、こればかりは本当に皮肉なものだなぁと思ってしまう。しかし要因は悲観的なものばかりではなく、ならば“生きている限りどうするか”に野心を燃やしている人の生き方はこの上なく美しい。まさに、それが今のHEROだ。17周年を迎えた彼らに抱いた感情の中で一番大きいもの、それは20周年へ向けて確実に一歩を踏み出した彼らと“もう一度”夢を見たいということだった。

Report◎Ayako Hirai
Photo◎千佳

-SET LIST-

  1. 「色合せの法則」
  2. 「to you…」
  3. アルコ&ピッツィカート
  4. 罪と罰
  5. Prelude
  6. めっちゃ好き
  7. 笑わなかった少年
  8. 星に願いを…
  9. Shall We Sing
  10. 「テノヒラ」
  11. 翼が折れて迷宮に迷い込んだ漆黒の天使
  12. CRACKER
  13. 人間定義
  14. 超過激愛歌~~Super Ultra Lovesong~

アンコール

  1. カゾエウタ。
  2. セツナウタ。
  3. 「ソプラノ」