【LIVE REPORT】Ashmaze.、ONEMAN TOUR 2023-24 「PARADOX」が結成4周年当日からスタート

Ashmaze. ONEMAN TOUR 2023-24 「PARADOX」
(4th Anniversary & Яyu Birthday)
2023/10/25(Wed.) Spotify O-WEST

4周年を迎えたAshmaze.のワンマンツアー「PARADOX」の初日公演の模様をオフィシャルレポートにてお届けする。

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Ashmaze.のワンマンツアー「PARADOX」が、10月25日に行われたSpotify O-WEST公演を皮切りに幕を開けた。この日は結成4周年を迎える当日であり、Яyu(Ba)のバースデーも兼ねたお祝いづくしの1日。さらに、彼らにとってSpotify O-WESTと言えば、まだコロナ禍の真っ只中だった2年前の10月にワンマンライブを行った場所でもある。間違いなく“あの日”を凌駕する力を持って、現在のAshmaze.を見せつけることにもなりえる日は、ワンマンツアーの初日でありながら、これらすべての意味を網羅した特別なメニューを兼ねていたライブだった。

Ashmaze.がネクストステージへと着実に歩みを進めていることを予感したのが、前回のワンマンツアーのファイナル公演(2023年8月4日 恵比寿LIQUIDROOM)にて初めて新曲「カルマ」を聴いた時だった。“苦悩の出口”を謳う楽曲の軸はブレずとも、そこはかとない神格化したオーラが生む荘厳さを纏っていた。そしてバンドの進化の予感を確信へと変えてくれたのが、ズバリ新たなワンマンツアー「PARADOX」の初日となったこの日、「カルマ」が内包する世界観をしっかりと歌と演奏でステージに落とし込みながら、ド頭から堂々たる出で立ちで披露する5人の姿だった。

のちのMCで双真(Vo)は、「4周年とЯyuのバースデー、それにツアー初日という“トリプルハッピーな日”」と少しおどけたニュアンスで話したが、ライブの運びは“ハッピー”に媚びることなくバンドの最先端な攻めの形を発揮。それは、「ニルヴァーナ」の演奏中にもしっかりと表れていた。Ashmaze.の核にある“苦悩”を司る双真が、神頼みでは救われない“悩み苦しみ全て”というフレーズを苦々しいニュアンスを込めて歌唱する姿はまるで、自らのカタルシスを経て人々の“悩み苦しみ”に寄り添おうとする彼の“在り方”の舵を切ったこと、ひいてはAshmaze.の指針をしっかりと示していたように思う。

この日のセットリストには、同会場で行われた前回のライブ時に演奏されていた曲もふんだんにラインナップされていた印象だった。新旧の楽曲が織り交ざることでそれぞれをより際立てているようでもあり、例えば、中盤に披露したミドルナンバー「見せかけの正常はバルーンの中身だった」に並べて、光乏しい天へと手を伸ばすように届けた「三日月がただ遠い」が見せる儚さがより沁みる展開に。冒頭で見せた隙のない勢いとは正反対のベクトルのアプローチで観客を陶酔させる技量も見事で、これこそがAshmaze.の世界観への没入感を高めているといっても大げさではない。

他にも、アッパーな楽曲もライブではお馴染みでありながら、Spotify O-WESTを基準にした“あの時”との最大の違いは、爆音にも負けない観客の声と爆発力だ。「拝啓、嫌いなお前へ」で狂騒するフロアに向かって「生きてるって感じ、しないか!?」と双真は投げかけたが、“生きてる”を一番感じさせたのは紛れもなくステージの5人だった。タガが外れたように、諒(Gt)と詩結(Gt)、ЯyuとS1TK(Dr)がそれぞれ向かい合うなどして掛け合う様子を見せた後、それらを率いるように双真は一言、「いくぞ、Ashmaze.!」と高らかに手を挙げた。その瞬間に溢れかえったバンド感に胸が高まったかと思えば、「GENOM」では間に鬱々としたセリフを挟みながら惜しみなく感情を解放していく様子は、この上なく痛快。時が経てば経つほど、人は泥臭さや必死さをさらけ出すことをプライドが許さなくなることもある。しかし、この時の5人はバンドに対する情熱を真っ向からぶつけている様子で、そんなプライドをもろともしていない。極めつけに双真が放った「一生虜にしてやるから、覚悟してろ」の一言には、さすがに痺れた。

そして、後半には現在のAshmaze.に通ずる大事なファクターともなる楽曲が用意されていた。まずは、「Hurt me」。オリエンタルテイストによって漂う深淵なトーンとカルト感は、1st Full Album「NIRVANA.」(23年6月発売)で見せていた進化の片鱗の一部でもあり、今後のAshmaze.の武器となっていくことを改めて見せつけた。そして、「INNOCENCE」。この曲がリリースされた時には想像し得なかったほど、狼煙をあげる際のアンセムとしての意味を持った曲だと感じている。

「Ashmaze.は、君たちを一人の人間として全力で肯定します」――双真

逆境から立ち上がるだけでなく先導していく力を与えてくれる、言わば戦う者の味方になってくれる曲でもある「INNOCENCE」を披露する直前に前置きした言葉にこそ、Ashmaze.が踏み出した新たな一歩の矛先が示されていた。“個の肯定”、これは確実に孤独からの救いとなる。そのメッセージをまずは内から放つように、双真はメンバー1人ひとりを指さしながらイントロを迎えた「シャボン玉」が本編ラストを飾った。流麗なメロディーに乗せて届けた、まさしく“ありのまま”を尊重して昇華していく美しいエンディングだった。

アンコールに応え、「「時代」」のMVをサプライズで初公開。この曲は、かつて2nd Mini Album「GENOM」に収録されていた曲で、その後メンバーが登場して同曲を実際に演奏した後、作曲者の詩結は「どこか節目のタイミングで再録して、MVを撮りたかった」と話した。コロナ禍だった制作当時、“諦めたくない”という心境の中で作った曲であり、これまで節目の折に“振り返る”ことが多かったとしながら、これからについて「前に進むためにツアーを回ります」と話した。さらに、諒が音頭を取ってЯyuへバースデーソングを全員で届けた後、バンドからはイヤモニのシールド、双真からは以前名前を書き間違えたというリベンジも込めてタバコをプレゼント。その中でЯyuも、これからについて「新しい時代に突入できる」と話していた。

今回のSpotify O-WESTでのライブ、そして「「時代」」という楽曲の再構築。これは、始動から間もなくしてコロナ禍のダメージを真っ向から受けながらも、折れることなく進んできた過去の清算の意味をなしていたのかもしれない。それらをワンマンツアー「PARADOX」の初日にすべて吐き出すことで、確実に新たな道を進んでいける。不安な時代を生きながらも希望を捨てずに心のエンジンを動かし続けた想いをなぞるように届けた「シリンダー」が、晴れ晴れしくワンマンツアーの門出を彩っていた。

ワンマンツアー「PARADOX」は年をまたいで行われ、2024年1月22日のツアーファイナルとなるSpotify O-EAST公演まで、これ以降16公演が控えている。彼らはもう、振り返ることなく突き進んでいくだろう。「「時代」」のMVでもラストシーンが夜明けであったように、5年目のAshmaze.は未来しか見えていないはずだから。

Report By Ayako Hirai

Photo By Akira Takami

[セットリスト]

1.カルマ

2.カゲロウの錯覚

3.ニルヴァーナ

4.シニカルパレード

5.見せかけの正常はバルーンの中身だった

6.三日月がただ遠い

7.Focus

8.拝啓、嫌いなお前へ

9.GENOM

10.羨望

11.Hurt me

12.INSIDE MY HEAD

13.INNOCENCE

14.シャボン玉

EN-1.「時代」

EN-2.シリンダー

【Ashmaze. ONEMAN TOUR 2023-24 「PARADOX」】

☆TOUR FINAL☆

1/22(月)Spotify O-EAST【TOUR FINAL】

11/4(土)福岡INSA

11/5(日)広島SECOND CRUTCH【諒Birthday】

11/11(土)金沢AZ

11/12(日)名古屋ell. FITS ALL

11/18(土)札幌Crazy Monkey

11/19(日)札幌Crazy Monkey

11/23(木・祝)長野LIVE HOUSE J

11/25(土)仙台MACANA

12/1(金)OSAKA MUSE

12/2(土)岡山IMAGE

12/10(日)西川口Hearts

12/16(土)千葉 稲毛K’S DREAM

1/6(土)高松DiME

1/7(日)神戸太陽と虎

1/13(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!

【OFFICIAL SITE】

https://www.ashmaze.com/