D’ESPAIRSRAY、Angeloのギタリストとして活動してきたKaryuが中心となり、ヴォーカリストのryo(HOLLOWGRAM / DALLE)、マニピュレイターの横山和俊と共に2022年に結成したH.U.G。始動と同時に大きな注目を集めた彼らはデビューの場となった2022年9月8日にSpotify O-EASTで行われたイベント【DEVIL’S PARTY 2022 Vol.2】でオーディエンスに強いインパクトを与え、2023年3月24日にSpotify O-WESTで行なわれた1stワンマン・ライブ【SHOWCASE01】も大成功に終わらせた。
いい波に乗ったことを感じさせるH.U.Gは、2023年6月10日に1stアルバム『HELIOS』をリリース。洗練されたヘヴィネスを湛えた彼らの音楽性は高い評価を得て、より多くのリスナーが彼らを注視することとなる。そして、『HELIOS』のリリースと同時に始まった<H.U.G TOUR 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS->はサポート・メンバーにNAOKI(b:FANTASISTA / ex.Kagrra,)とTAKEO(ds:PIERROT / Angelo)という強者を迎えた布陣で臨み、各地で観応えのあるライブを披露。アルバム同様ライブも好評で、H.U.Gのメンバー達は確かな手応えを感じたに違いない。
そして、多くのリスナーを虜にした同ツアーのファイナル公演が7月7日に白金高輪SELENE b2で開催された。ウィークデーのライブでいながら当日は多数のリスナーが会場に集まり、オンライン配信も実施されるという華やかさに包まれた公演となった。
暗転した場内にダーク&サイバーなオープニングSEが流れ、H.U.Gのメンバー達がステージに姿を現した。客席から大歓声と熱い拍手が湧き起こり、横山が奏でる静謐なピアノの調べに続いて一気に加速する「SEEDS」からライブはスタート。貴公子を思わせる眩いオーラとエモーショナルな歌声、アクティブなステージングでオーディエンスを魅了するryo。膝の辺りにギターを構えたワイルドなシルエットとソリッドなギター・サウンドの取り合わせが最高にカッコいいKaryu。ミステリアスな雰囲気を漂わせつつ多彩な音色で楽曲を彩る横山。強い存在感を発するメンバーが並び立った姿とラウドかつ洗練感を帯びたサウンドにオーディエンスも熱いリアクションを見せ、ライブは上々の滑り出しとなった。
その後は「今日が最終公演になりました。ありがとうございます。この日を迎えられて、とても嬉しいです。今日はここにいる全員の声と力を貸してほしいと思います」というryoの挨拶を挟みつつパワフル&スタイリッシュな「HUG」やヘヴィなギターと浮遊感を纏ったキーボードのマッチングを活かした「DON’T DOUBT」、ファットにドライブする「BLOOD PIN」などをプレイ。重厚さとキレのよさを兼ね備えたサウンドは心地好さに溢れているし、メンバー全員が織りなす激しいパフォーマンスには目を奪わずにいられない。説得力に溢れたステージからは今回のツアーを経て、H.U.Gがさらなるパワーアップを果たしたことが如実に感じられた。
ライブ中盤では煌びやかな「HEART」や無機質な歌中と心を駆り立てるサビの対比を活かした「BUTTERFLY」を披露。「それでも人は同じ過ちを何度も繰り返す。争い、戦争を起こす。暴動も起こっている。それでも人はどうしたって、大切に思っている人のもとへ帰っていくと思う。いくつの悲しみや死を乗り越えても、必ず僕らは愛する者のもとへ帰る。さあ、一緒に帰ろう」というryoの言葉と共に届けられた「熾-oki-」からライブは後半へ。ヘヴィネスとエキゾチックな香りを融合させた「Marry of the blood」(D’ESPAIRSRAY)、アッパーな「Flash dancers」などで幅広さを見せ、ストーリー性を感じさせる流れに惹き込まれたし、キャッチーなナンバーも甘ったるくはない、アグレッシブなシーンでも華麗さが失われないといった彼らの魅力を、たっぷりと味わせてくれた。
もうひとつ、ラウド&ソリッドなKaryuのギターを核に据えたH.U.Gのサウンドのカッコよさはライブで一層際立つことも印象的だった。生で体感するH.U.Gの炸裂力や怒涛の勢いなどは圧倒的なので、まだ彼らのライブを観たことがない人には会場に足を運ぶことを強くお薦めしたい。
アグレッシブな「WHO IS THE ROMEO」と退廃的な雰囲気でオーディエンスを惹き込む前半から膨大なエネルギーを放出しながら高速で疾走する後半に至る「HELIOS」(新曲)でオーディエンスのボルテージをさらに引き上げた後、ラストソングとしてスロー・チューンの「LOVE THAT NEVER ENDS」が演奏された。
場内が最高潮といえる盛り上がりを見せたシーンの直後に、エモーショナルな「LOVE THAT NEVER ENDS」をしっかり聴かせる辺りも実に見事。同曲の激しさと透明感を併せ持ったサウンドは深く心に染みる力に満ちていて、「LOVE THAT NEVER ENDS」を演奏し終えてH.U.Gがステージから去っていった場内は感動的な余韻に包まれていた。
アンコールではH.U.Gのメンバーに続いて、スペシャル・ゲストとして摩天楼オペラの燿がステージに姿を現した。H.U.Gの1stアルバム『HELIOS』はスケジュールの関係でNAOKIがレコーディングに参加できなかったため燿やZERO(THE MICRO HEAD 4N’S/OFIAM/Luv PARADE)、Ni~ya(NIGHTMARE)、MASASHI(Versailles)といった錚々たる顔ぶれがベースを弾いていることも話題を呼んでいる。今回のライブでは燿が招かれ、彼がCDでベースを弾いた「SEEDS」をH.U.Gと共に届ける形で披露された。
燿が加わった「SEEDS」に客席からは大歓声が起こっていたし、その場の空気にすぐに馴染んで余裕の表情で良質なベースを聴かせた燿もさすがの一言に尽きる。H.U.Gからの粋なプレゼントをオーディエンス全員が喜んで受け止めたことがはっきりと伝わってきた。
その後は「DROP」と「HELIOS」を、畳みかけるようにプレイ。最後の瞬間まで全力でいきあげるH.U.Gにオーディエンスも熱狂的なリアクションを見せ、白金高輪SELENE b2の場内はツアー・ファイナルにふさわしい盛大な盛り上がりとなった。
初の全国ツアーを、最良の形で締め括ったH.U.G。ファイナル公演を観て、彼らが個性的かつ上質な音楽性を備えていることに加えて、ライブバンドとしても非常に魅力的であることを実感できた。アンコールのMCでKaryuは「このひとつの波紋がどんどん大きくなるようにがんばりますので、応援よろしくお願いします」と語ったが、H.U.Gがより多くのリスナーを巻き込んでいくことを予感せずにいられない。今後の彼らの動向にも大いに注目していきたいと思う。
文◎村上孝之
写真◎岡本麻衣【ODD JOB LTD.】
[SET LIST]
01. SEEDS
02. HUG
03. DON’T DOUBT
04. BLOOD PIN
05. DROP
06. HEART
07. BUTTERFLY
08. 熾-OKI-
09. Marry of the blood
10. Flash dancers
11. WHO IS THE ROMEO
12. HELIOS
13. LOVE THAT NEVER ENDS
En
01. SEEDS(ゲストベーシスト:燿)
02. DROP
03. HELIOS
H.U.G
Vocal:ryo(HOLLOWGRAM / DALLE)
Guitar:Karyu(Angelo / Luv PARADE / ex.D’ESPAIRSRAY)
Manipulate&Keyboard&percussion:横山和俊(YokodieS)
サポートBass:NAOKI(FANTASISTA / ex.Kagrra,)
サポートDrums:TAKEO(PIERROT / Angelo)
スペシャルゲスト:燿(摩天楼オペラ)