【LIVE REPORT】零[Hz]、自らの領域で魅せた真骨頂。「今年で5周年、6年目へと歩き出しました。そんな俺たちの集大成です」
零[Hz]が、ONEMAN TOUR「REGION ZERO」のツアーファイナル公演を6月15日、
Zepp Shinjukuにて開催した。本公演のライブレポートをお届けする。
零[Hz]が、ONEMAN TOUR「REGION ZERO」のツアーファイナル公演を6月15日、
Zepp Shinjukuにて開催した。本公演のライブレポートをお届けする。
零[Hz] ONEMAN TOUR「REGION ZERO」-TOUR FINAL-
2023年6月15日(木) Zepp Shinjuku
人と人との繋がり、ロック・バンドというフィールドにおいてそれを“絆”という言葉で表すと少々クサいセリフに聞こえるだろうか。しかし零[Hz]を見ていると、素直にそんな言葉が浮かんでくる。強い絆や縁で結ばれたメンバー5人を中心としてファンやスタッフを含めた“チームゼロヘルツ”の結束は強まっていき、その証でもあるメンバーの左腕につけられている腕章は今や5人だけのものではなく、大きな“チーム”としての意味を持ったシンボルとも言える。
結成から5年を迎えてベストアルバム「ZERO」をリリースし、バンドに対する想いを高めて臨んだワンマンツアー「REGION ZERO」。タイトル通り、零[Hz]が作る唯一の空間を生み出しながら、充実した思いで回った全18公演だった。途中、RYOGAが体調不良により不在となった事態もあったが、これも“みんなで”乗り越えた。そして、19公演目となるツアーファイナルには、零[Hz]が生まれてから今まで感じ得たすべての感情や出来事から辿り着いた答えがあったように思う。それらは紛れもなく、今だからこそ伝えることが出来たメッセージだ。
LEDやレーザーを用いた派手な演出に似合うSE「REGION ZERO」に乗せて登場したメンバーが、この日のトップに選んだのは「AXIZ」だった。“東京ミクスチャーロック”を形作ったとする、〈これぞ零[Hz]〉という真骨頂を示す幕開け。ふと印象的に耳に飛び込んで来た一節、“歪む景色は雨模様”――RYOGAによると、メンバーの中に雨男がいる(!?)とのことでこれまでも節目は雨が多かったという。実際、この日も外は雨に見舞われていた。そんな雨模様に例えられた乗り越えるべき壁は、この5年の間にもたくさん彼らに立ちはだかった。その度に団結して壁を突破してきたことを感じながら感慨に浸っていたのも束の間、アコースティックギターが映えるロックサウンドが際立つ「The DOPERA」や「惡鬼招雷」へと攻撃的に続いて、ノンストップに駆け抜けていく。
「皆さんも持ってきたものがあると思います。俺たちも、最高のものを持ってきました」――ROY
MCを挟み、5人が自然な様子でアイコンタクトをしてスタートした「TRAUM」や「SURVIVE」では、現実に目を向けて抗いながらも未来へと思いを馳せていた過去の思いが、これまでの軌跡によってよりリアリティを増したメッセージとなって胸を打つ。続いた「心中メリーゴーランド」では、挑戦的な魅せ場の1つでもあった赤い照明とミラーボールにマッチしたアダルトなモードへも見事にチェンジ。そして、「結晶」の澄んだ空気に続いて聴かせた「叶えたい夢と、守れない君と」は、“僕の目に映る人、みんなみんなが幸せでいて欲しい”とレーザーが映しだした光の輪の中で両手を広げながら歌うROYを筆頭にしたステージ上がなんとも神秘的で、会場が寛大な思いやりに包まれていった。これもまた、時を重ねたからこそ強まった人生観であり、伝えたい感情の断片でもある。
ラストスパートは、まさに今ツアーの1本1本が“楽しい”という想いの中で充実していたことを証明する集大成だった。「思いっきりぶつかって行こう」と口火をきった「DISTURBO」は、5人がこのバンドを独立した視点で動かしていく起点となった曲。そんな曲をメンバー同士が目配せしながら絡み合って披露する姿や、Rio(G)からLeoのソロ回しをバッチリ決める様子に新めて決意の団結力を感じずにはいられない。さらに、LeoとTEIKAがハイタッチを交わすなどステージ上の臨場感も増した「IDEATRUMP」や「BAKEMONO carnival」ではフロアがモッシュに揺れ、「skeles me dop HEADz」ではCo2が吹き出す中で巻き起こったヘッドバンギングの嵐。そして、発声の解禁に合わせて拳と声があがる進化を遂げた「VENOM」の爆発力を経て、「SINGULARITY」へ。
「今日は集まってくれてありがとう。俺たち零[Hz]は、今年で5周年、6年目へと歩き出しました。そんな俺たちの集大成です」――ROY
そう語り掛け、さらに「みんなで作りましょう」と伝えて届けた「SINGULARITY」は、パワフルな中に繊細さも帯びていて、そこには弱みさえもさらけ出した彼らの真の強さが秘められている。そんな1曲を受け止める客席にはタオルが旋回し、“チームゼロヘルツ”によって生み出されていた得も言われぬ一体感。そこへ響いた「これからも俺たちと最高のROCKしようぜ!」というROYの一言で、エモーショナルなエンディングを迎えた。
アンコールは、「DAZZLING ABYSS PARADE」を始め、計5曲を披露。中でも、この日のラストを飾ることとなった「終天浮游」が、格別だった。コロナ禍を経て、ライブにおけるレギュレーションも徐々に解除されてきた昨今の状況を踏まえてROYは、「新しいことが増えたんじゃなくて、俺たちがもともと出来たことをまた俺たちの手で掴み取れた、そういうことなんです。俺たちで俺たちの音楽をもう一度楽しんでいこう」と話した。まさに「終天浮游」も観客のシンガロングがあってこそ、完成する楽曲の1つでもある。歌詞をモニターに映しながら言葉を噛みしめながら歌い進めていく中で響き渡った美しいシンガロングがロマンチックで、再び掴み取った情景を祝すかのように銀テープが華々しく宙を舞った。
「これからも、素敵な音楽を俺たちと一緒に奏でていって欲しいと思います」――ROY
8月2日にはNEW SINGLE「TRINITY∴ONENESS」がリリースされ、ONEMAN TOUR「THEATER of BRAT」の開催も発表された。理想があって、そこに辿り着くための美しいまでの執念が、彼らにはある。そこから生まれる零[Hz]の音が、言葉が、多くの人の心を動かし、導いていく未来は続く。そしてここからまた紡いでいくのだ、“みんなで”。
写真◎菅沼剛弘
レポート・文◎平井綾子
[セットリスト]
-SE-(REGION ZERO)
01.AXIZ
02.The DOPERA
03.惡鬼招雷
04.TRAUM
05.SURVIVE
06.心中メリーゴーランド
07.結晶
08.叶えたい夢と、守れない君と
09.DISTURBO
10.IDEATRUMP
11.BAKEMONO carnival
12.skeles me dop HEADz
13.VENOM
14.SINGULARITY
-EN-
01.DAZZLING ABYSS PARADE
02.enigma
03.太陽はただ僕達を照らしている訳じゃない
04.ROYAL RAMPAGE
05.終天浮游