「今回は3回目ということで、今までとは違った嗜好の対バンさんでやらせていただいて。今日1日で刺激いっぱいでした」
アンコールでZERO(Ba)がそう語ったように、2023年7月9日新宿BLAZEで開催したLuv PARADE主催『DEVIL’S PARTY #3』は、今までとは雰囲気の異なる出演バンドに彩られた悪魔の宴だった。それはこのイベントが今後も幅広く継続的に続く宣言のように思えたし、同時にカバー曲を軸に活動するLuv PARADEというバンドの、新たな可能性と拡がりを十分に感じた夜でもあった。
トップバッターは先日初のワンマンツアー『H.U.G TOUR 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS-』を大盛況に終えたばかりのH.U.G。歓声に出迎えられ、白い衣装を纏った5人がステージに現れる。ryo(Vo)が高らかに右手をあげて始まったのは、このツアーで披露された新曲「HELIOS」。エキゾチックなメロディと、すっかりバンドとして覚醒したH.U.Gのアンサンブルがフロアを制していく様は圧巻だ。艶のある声と獰猛なシャウトを巧みに使い分けるryo、前屈みの戦闘体制で分厚い重低音を作っていくKaryu(Gt)。光るスティックでバンドを統制していく横山和俊(Mani&Key&Per)も初っ端からフルスロットルで攻める。シーケンスに絡むTAKEO(Dr/PIERROT, Angelo)のリズム、グルーヴを操っていくMASASHI(Ba/Versailles)もサポートという枠を越えて、ロックバンド・H.U.Gの存在をしっかりとオーディエンスに伝えていく。
「太陽に感謝しよう」とryoの言葉で始まった「DROP」。疾走する楽器陣とryoの伸びやかなメロディが美しく交差していく。「LOVE THAT NEVER ENDS」では優しく強く、しっとりと愛を表現する。
「僕らまだ1年も経っていない新人バンドなんで、名前だけでも覚えていってください。先日とある先輩に“フグ”ですか? と言われたんですけど……」と笑いを誘いながらも、「WHO IS THE ROMEO」のどっしりとしたヘヴィグルーヴを轟かせた。間奏ではフロア全員沈み込んでから一斉にジャンプ! ラストは「HEART」の解放的なメロディが会場をいっぱいの愛で包みこみ、「H.U.G! H.U.G! H.U.G!」コールが巻き起こる中、H.U.Gはステージを終えた。
「新宿BLAZE! 他のバンドが絶対しない挨拶するぜ! こーんばんわーっ!!」
団長(Vo)の高らかな挨拶で登場したNoGoD。K(Dr)の乱れ撃つドラミング、hibiki(Ba)の傍若無尽なボトム、Shinno(Gt)がザクザクとエッジィに攻め、Iyoda Kohei(Gt)のシュレッドギターが艶やかにキマる。降り注ぐ爆音とスキルフルの演奏力で、1曲目「現役聖書」からオーディエンスを圧倒していった。「最高の布教活動、お見せしましょう!」団長の不適な笑みから「What do you say」へ。伸びやかなハイトーンが天高く突き抜けていく。
“セクシーのかたまり(H.U.G、Luv PARADE)”と“美しさのかたまり(Moi dix Mois)”の中にどうして自分たちが呼ばれたのか、そう自問自答しながら悪魔的な(?)おしゃべりで観客の心を掴んでいく団長。「NoGoD、音楽だけはちゃんとやっておりますので。目は塞いでも耳は塞がないで」と、「mind’s eyes」。ヘヴィなグルーヴと美メロを絡ませながら卓越した演奏力と貫禄に溢れた表現力で魅了する。
ドラマチックな楽曲展開とメロディックなフレーズが交錯していくキラーチューン「神風」で圧倒し、トドメは団長が「このジャンルが消えないように証明しようぜ新宿―!」と熱く声を上げて始まった高速ナンバー「Never fade away」を投下。「よぉく、覚えておけ! 俺たちがNoGoD!!」そう言い残して、怒涛のステージを終えた5人は去っていった。
青く照らされた幻想的な世界。チェンバロの音色が印象的なSEが流れる。メンバー各々が登場し、それぞれの持ち場につく。Mana(Gt)が登場し、青く光るクリスタルのギターを優雅にに掲げると悲鳴のような歓声が沸き起こった。
「より深い、暗黒の世界へ、皆でいきましょう」
最後に現れたSeth(Vo)がそう呟くと、メタリックなリフが暴れだし、フロアの頭が一斉に振り乱れる。「Material Death」で、Moi dix Moisの妖しくも美しい世界が解き放たれた。シンフォニックな響きの中で猛り狂うManaとRyux(Gt)のノイジーでヘヴィなツインギターの刻みが耳をつんざく。
「今宵は『DEVIL’S PARTY』。悪魔の宴だな。ということはすなわち、サバト。より深い暗黒の世界へあなたたちをいざなおう」
Sethの誘いで導かれる「Wichcraft」。Hayato(Dr)のタイトで軽やかなドラミングとSugiyaの(Ba)の堅実的なベースライン、Manaのピッキングハーモニクスが心地よい。クワイアが響き渡り、Sethが妖艶な旋律を淫らに重ねていく「Solitude」、ワイルドかつエレガントな「Beast side」、アッパーチューン「Dead Scape」でフロアの熱をぐんぐんあげていく。ラストは「Ange〜D side holy wings〜」のシンフォニックな轟音が会場を包みこみ、Moi dix Moisの荘厳な世界はフィナーレを迎えた。
トリはもちろん、Luv PARADE。漆黒に身を包んだ4人を精一杯の声援で出迎えるオーディエンス。エレクトロなSEがそのままシンセサウンドへと傾れ込み、「行こうか」紫色の長いストールを靡かせながらTAKA(Vo/defspiral)がゆっくりとクラップ。地を這う大蛇のような重低音がずっしりと襲いかかる。「Poker Face(Lady GAGA)」、「Toxic(Britney Spears)」とすっかり、Luv PARADEの楽曲といっても過言ではないほど自分たちのものへと妖しく昇華したカバーで一気に惹き混んでいく。
「『DEVIL’S PARTY』へようこそ! みなさんまだまだ騒ぎ足りないよね」
TAKAの導きで、淫靡な香りを漂わせる「BAD GUY(Billie Eilish)」。的確なTSUKASA(Dr)のビートに合わせて、ZERO(Ba)がグルーヴを重ね、Karyu(Gt)が歪みの壁を構築する。そこに大人の色香たっぷりのTAKAのボーカルが乗れば、どんな楽曲でもLuv PARADEになる、そんなバンドとしての懐を魅せつけていく。緩急自在のグルーヴが急襲する「DEVILS’ PARADE(D’ESPAIRSRAY)」、そして「My Heart Will Go On(Céline Dion)」は彼らの余裕と貫禄たっぷりの表現力で圧倒し、オーディエンスは酔いしれた。
次回のワンマンライブ告知を挟んだ「Dub-I-Dub」は、ハッピーなのにどこか悪魔的な祝祭を感じさせるところにLuv PARADEのアイデンティティを感じ、「MIRROR(D’ESPAIRSRAY)」の狂気性でフロアは興奮の坩堝と化す。「まだまだ物語は始まったばかりです」とのTAKAの紹介でラストナンバー「The Never Ending Story(Limmahi)」へ。真っ直ぐなメロディとエッジィな演奏はどこまでも、いつまでも突き抜けていくようであった。
「Sk8er Boi(Avril Lavigne)」で始まったアンコール。重心は低くもなぜか軽快に感じるビートでフロアは思いっきり縦に揺れ、熱気はそのままに「DEATH POINT(D’ESPAIRSRAY)」へ。ステージからの熱とフロアの熱はシャウトのコール・アンド・レスポンスが最高潮に達し、悪魔の宴は幕を閉じた。
D’ESPAIRSRAYの結成日となる9月9日にVeats Shibuyaでのワンマンライブも発表されたLuv PARADE。この日はいつもと異なり、D’ESPAIRSRAYの楽曲を多めに選曲するという。彼らが放つ「DEVIL’S NEW WORLD」から目が離せない。
文◎冬将軍
写真◎Misato Koyama【ODD JOB LTD.】
SET LIST
■H.U.G
■NoGoD
■Moi dix Mois
■Luv PARADE
En
D’ESPAIRSRAY、Angeloのギタリストとして活動してきたKaryuが中心となり、ヴォーカリストのryo(HOLLOWGRAM / DALLE)、マニピュレイターの横山和俊と共に2022年に結成したH.U.G。始動と同時に大きな注目を集めた彼らはデビューの場となった2022年9月8日にSpotify O-EASTで行われたイベント【DEVIL’S PARTY 2022 Vol.2】でオーディエンスに強いインパクトを与え、2023年3月24日にSpotify O-WESTで行なわれた1stワンマン・ライブ【SHOWCASE01】も大成功に終わらせた。
いい波に乗ったことを感じさせるH.U.Gは、2023年6月10日に1stアルバム『HELIOS』をリリース。洗練されたヘヴィネスを湛えた彼らの音楽性は高い評価を得て、より多くのリスナーが彼らを注視することとなる。そして、『HELIOS』のリリースと同時に始まった<H.U.G TOUR 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS->はサポート・メンバーにNAOKI(b:FANTASISTA / ex.Kagrra,)とTAKEO(ds:PIERROT / Angelo)という強者を迎えた布陣で臨み、各地で観応えのあるライブを披露。アルバム同様ライブも好評で、H.U.Gのメンバー達は確かな手応えを感じたに違いない。
そして、多くのリスナーを虜にした同ツアーのファイナル公演が7月7日に白金高輪SELENE b2で開催された。ウィークデーのライブでいながら当日は多数のリスナーが会場に集まり、オンライン配信も実施されるという華やかさに包まれた公演となった。
暗転した場内にダーク&サイバーなオープニングSEが流れ、H.U.Gのメンバー達がステージに姿を現した。客席から大歓声と熱い拍手が湧き起こり、横山が奏でる静謐なピアノの調べに続いて一気に加速する「SEEDS」からライブはスタート。貴公子を思わせる眩いオーラとエモーショナルな歌声、アクティブなステージングでオーディエンスを魅了するryo。膝の辺りにギターを構えたワイルドなシルエットとソリッドなギター・サウンドの取り合わせが最高にカッコいいKaryu。ミステリアスな雰囲気を漂わせつつ多彩な音色で楽曲を彩る横山。強い存在感を発するメンバーが並び立った姿とラウドかつ洗練感を帯びたサウンドにオーディエンスも熱いリアクションを見せ、ライブは上々の滑り出しとなった。
その後は「今日が最終公演になりました。ありがとうございます。この日を迎えられて、とても嬉しいです。今日はここにいる全員の声と力を貸してほしいと思います」というryoの挨拶を挟みつつパワフル&スタイリッシュな「HUG」やヘヴィなギターと浮遊感を纏ったキーボードのマッチングを活かした「DON’T DOUBT」、ファットにドライブする「BLOOD PIN」などをプレイ。重厚さとキレのよさを兼ね備えたサウンドは心地好さに溢れているし、メンバー全員が織りなす激しいパフォーマンスには目を奪わずにいられない。説得力に溢れたステージからは今回のツアーを経て、H.U.Gがさらなるパワーアップを果たしたことが如実に感じられた。
ライブ中盤では煌びやかな「HEART」や無機質な歌中と心を駆り立てるサビの対比を活かした「BUTTERFLY」を披露。「それでも人は同じ過ちを何度も繰り返す。争い、戦争を起こす。暴動も起こっている。それでも人はどうしたって、大切に思っている人のもとへ帰っていくと思う。いくつの悲しみや死を乗り越えても、必ず僕らは愛する者のもとへ帰る。さあ、一緒に帰ろう」というryoの言葉と共に届けられた「熾-oki-」からライブは後半へ。ヘヴィネスとエキゾチックな香りを融合させた「Marry of the blood」(D’ESPAIRSRAY)、アッパーな「Flash dancers」などで幅広さを見せ、ストーリー性を感じさせる流れに惹き込まれたし、キャッチーなナンバーも甘ったるくはない、アグレッシブなシーンでも華麗さが失われないといった彼らの魅力を、たっぷりと味わせてくれた。
もうひとつ、ラウド&ソリッドなKaryuのギターを核に据えたH.U.Gのサウンドのカッコよさはライブで一層際立つことも印象的だった。生で体感するH.U.Gの炸裂力や怒涛の勢いなどは圧倒的なので、まだ彼らのライブを観たことがない人には会場に足を運ぶことを強くお薦めしたい。
アグレッシブな「WHO IS THE ROMEO」と退廃的な雰囲気でオーディエンスを惹き込む前半から膨大なエネルギーを放出しながら高速で疾走する後半に至る「HELIOS」(新曲)でオーディエンスのボルテージをさらに引き上げた後、ラストソングとしてスロー・チューンの「LOVE THAT NEVER ENDS」が演奏された。
場内が最高潮といえる盛り上がりを見せたシーンの直後に、エモーショナルな「LOVE THAT NEVER ENDS」をしっかり聴かせる辺りも実に見事。同曲の激しさと透明感を併せ持ったサウンドは深く心に染みる力に満ちていて、「LOVE THAT NEVER ENDS」を演奏し終えてH.U.Gがステージから去っていった場内は感動的な余韻に包まれていた。
アンコールではH.U.Gのメンバーに続いて、スペシャル・ゲストとして摩天楼オペラの燿がステージに姿を現した。H.U.Gの1stアルバム『HELIOS』はスケジュールの関係でNAOKIがレコーディングに参加できなかったため燿やZERO(THE MICRO HEAD 4N’S/OFIAM/Luv PARADE)、Ni~ya(NIGHTMARE)、MASASHI(Versailles)といった錚々たる顔ぶれがベースを弾いていることも話題を呼んでいる。今回のライブでは燿が招かれ、彼がCDでベースを弾いた「SEEDS」をH.U.Gと共に届ける形で披露された。
燿が加わった「SEEDS」に客席からは大歓声が起こっていたし、その場の空気にすぐに馴染んで余裕の表情で良質なベースを聴かせた燿もさすがの一言に尽きる。H.U.Gからの粋なプレゼントをオーディエンス全員が喜んで受け止めたことがはっきりと伝わってきた。
その後は「DROP」と「HELIOS」を、畳みかけるようにプレイ。最後の瞬間まで全力でいきあげるH.U.Gにオーディエンスも熱狂的なリアクションを見せ、白金高輪SELENE b2の場内はツアー・ファイナルにふさわしい盛大な盛り上がりとなった。
初の全国ツアーを、最良の形で締め括ったH.U.G。ファイナル公演を観て、彼らが個性的かつ上質な音楽性を備えていることに加えて、ライブバンドとしても非常に魅力的であることを実感できた。アンコールのMCでKaryuは「このひとつの波紋がどんどん大きくなるようにがんばりますので、応援よろしくお願いします」と語ったが、H.U.Gがより多くのリスナーを巻き込んでいくことを予感せずにいられない。今後の彼らの動向にも大いに注目していきたいと思う。
文◎村上孝之
写真◎岡本麻衣【ODD JOB LTD.】
[SET LIST]
01. SEEDS
02. HUG
03. DON’T DOUBT
04. BLOOD PIN
05. DROP
06. HEART
07. BUTTERFLY
08. 熾-OKI-
09. Marry of the blood
10. Flash dancers
11. WHO IS THE ROMEO
12. HELIOS
13. LOVE THAT NEVER ENDS
En
01. SEEDS(ゲストベーシスト:燿)
02. DROP
03. HELIOS
H.U.G
Vocal:ryo(HOLLOWGRAM / DALLE)
Guitar:Karyu(Angelo / Luv PARADE / ex.D’ESPAIRSRAY)
Manipulate&Keyboard&percussion:横山和俊(YokodieS)
サポートBass:NAOKI(FANTASISTA / ex.Kagrra,)
サポートDrums:TAKEO(PIERROT / Angelo)
スペシャルゲスト:燿(摩天楼オペラ)
零[Hz] ONEMAN TOUR「REGION ZERO」-TOUR FINAL-
2023年6月15日(木) Zepp Shinjuku
人と人との繋がり、ロック・バンドというフィールドにおいてそれを“絆”という言葉で表すと少々クサいセリフに聞こえるだろうか。しかし零[Hz]を見ていると、素直にそんな言葉が浮かんでくる。強い絆や縁で結ばれたメンバー5人を中心としてファンやスタッフを含めた“チームゼロヘルツ”の結束は強まっていき、その証でもあるメンバーの左腕につけられている腕章は今や5人だけのものではなく、大きな“チーム”としての意味を持ったシンボルとも言える。
結成から5年を迎えてベストアルバム「ZERO」をリリースし、バンドに対する想いを高めて臨んだワンマンツアー「REGION ZERO」。タイトル通り、零[Hz]が作る唯一の空間を生み出しながら、充実した思いで回った全18公演だった。途中、RYOGAが体調不良により不在となった事態もあったが、これも“みんなで”乗り越えた。そして、19公演目となるツアーファイナルには、零[Hz]が生まれてから今まで感じ得たすべての感情や出来事から辿り着いた答えがあったように思う。それらは紛れもなく、今だからこそ伝えることが出来たメッセージだ。
LEDやレーザーを用いた派手な演出に似合うSE「REGION ZERO」に乗せて登場したメンバーが、この日のトップに選んだのは「AXIZ」だった。“東京ミクスチャーロック”を形作ったとする、〈これぞ零[Hz]〉という真骨頂を示す幕開け。ふと印象的に耳に飛び込んで来た一節、“歪む景色は雨模様”――RYOGAによると、メンバーの中に雨男がいる(!?)とのことでこれまでも節目は雨が多かったという。実際、この日も外は雨に見舞われていた。そんな雨模様に例えられた乗り越えるべき壁は、この5年の間にもたくさん彼らに立ちはだかった。その度に団結して壁を突破してきたことを感じながら感慨に浸っていたのも束の間、アコースティックギターが映えるロックサウンドが際立つ「The DOPERA」や「惡鬼招雷」へと攻撃的に続いて、ノンストップに駆け抜けていく。
「皆さんも持ってきたものがあると思います。俺たちも、最高のものを持ってきました」――ROY
MCを挟み、5人が自然な様子でアイコンタクトをしてスタートした「TRAUM」や「SURVIVE」では、現実に目を向けて抗いながらも未来へと思いを馳せていた過去の思いが、これまでの軌跡によってよりリアリティを増したメッセージとなって胸を打つ。続いた「心中メリーゴーランド」では、挑戦的な魅せ場の1つでもあった赤い照明とミラーボールにマッチしたアダルトなモードへも見事にチェンジ。そして、「結晶」の澄んだ空気に続いて聴かせた「叶えたい夢と、守れない君と」は、“僕の目に映る人、みんなみんなが幸せでいて欲しい”とレーザーが映しだした光の輪の中で両手を広げながら歌うROYを筆頭にしたステージ上がなんとも神秘的で、会場が寛大な思いやりに包まれていった。これもまた、時を重ねたからこそ強まった人生観であり、伝えたい感情の断片でもある。
ラストスパートは、まさに今ツアーの1本1本が“楽しい”という想いの中で充実していたことを証明する集大成だった。「思いっきりぶつかって行こう」と口火をきった「DISTURBO」は、5人がこのバンドを独立した視点で動かしていく起点となった曲。そんな曲をメンバー同士が目配せしながら絡み合って披露する姿や、Rio(G)からLeoのソロ回しをバッチリ決める様子に新めて決意の団結力を感じずにはいられない。さらに、LeoとTEIKAがハイタッチを交わすなどステージ上の臨場感も増した「IDEATRUMP」や「BAKEMONO carnival」ではフロアがモッシュに揺れ、「skeles me dop HEADz」ではCo2が吹き出す中で巻き起こったヘッドバンギングの嵐。そして、発声の解禁に合わせて拳と声があがる進化を遂げた「VENOM」の爆発力を経て、「SINGULARITY」へ。
「今日は集まってくれてありがとう。俺たち零[Hz]は、今年で5周年、6年目へと歩き出しました。そんな俺たちの集大成です」――ROY
そう語り掛け、さらに「みんなで作りましょう」と伝えて届けた「SINGULARITY」は、パワフルな中に繊細さも帯びていて、そこには弱みさえもさらけ出した彼らの真の強さが秘められている。そんな1曲を受け止める客席にはタオルが旋回し、“チームゼロヘルツ”によって生み出されていた得も言われぬ一体感。そこへ響いた「これからも俺たちと最高のROCKしようぜ!」というROYの一言で、エモーショナルなエンディングを迎えた。
アンコールは、「DAZZLING ABYSS PARADE」を始め、計5曲を披露。中でも、この日のラストを飾ることとなった「終天浮游」が、格別だった。コロナ禍を経て、ライブにおけるレギュレーションも徐々に解除されてきた昨今の状況を踏まえてROYは、「新しいことが増えたんじゃなくて、俺たちがもともと出来たことをまた俺たちの手で掴み取れた、そういうことなんです。俺たちで俺たちの音楽をもう一度楽しんでいこう」と話した。まさに「終天浮游」も観客のシンガロングがあってこそ、完成する楽曲の1つでもある。歌詞をモニターに映しながら言葉を噛みしめながら歌い進めていく中で響き渡った美しいシンガロングがロマンチックで、再び掴み取った情景を祝すかのように銀テープが華々しく宙を舞った。
「これからも、素敵な音楽を俺たちと一緒に奏でていって欲しいと思います」――ROY
8月2日にはNEW SINGLE「TRINITY∴ONENESS」がリリースされ、ONEMAN TOUR「THEATER of BRAT」の開催も発表された。理想があって、そこに辿り着くための美しいまでの執念が、彼らにはある。そこから生まれる零[Hz]の音が、言葉が、多くの人の心を動かし、導いていく未来は続く。そしてここからまた紡いでいくのだ、“みんなで”。
写真◎菅沼剛弘
レポート・文◎平井綾子
[セットリスト]
-SE-(REGION ZERO)
01.AXIZ
02.The DOPERA
03.惡鬼招雷
04.TRAUM
05.SURVIVE
06.心中メリーゴーランド
07.結晶
08.叶えたい夢と、守れない君と
09.DISTURBO
10.IDEATRUMP
11.BAKEMONO carnival
12.skeles me dop HEADz
13.VENOM
14.SINGULARITY
-EN-
01.DAZZLING ABYSS PARADE
02.enigma
03.太陽はただ僕達を照らしている訳じゃない
04.ROYAL RAMPAGE
05.終天浮游
主催者の己龍をはじめ、夕暮れガールスーサイド、DEZERTと並び全4バンドが集い行われた本イベント。Royzは、2番目に登場した。野外ステージとあって常にステージが露わになっている中セッティングが行われていると、客席のどこからともなく悲鳴が起こった。その理由は、セッティングのためにメンバーが姿を現した……それだけではなく、新衣装を身にまとっていたことだ! さらに、「チェックやけど、遊んでおいて」と始まった「マーブルパレット」がデモンストレーションながらも観客をヒートアップさせた。
ドラムセットにメンバーが集結したのち、「俺たちとお前たちの“ANTITHESIS”だ!」と叫びあげて会場中に広がる拳と叫び声が盛り立てるようにして「ANTITHESIS」が幕開けを飾った。「もう迷わないよ」という昴の歌声をはじめとした、決意にも似た強い主張が大空へと浸透していく。その様子は実にエモーショナルで、序盤ながらクライマックスさながらにそこはかとない熱をはらんでいた。
足並みをそろえるようにメンバーが視線をやる先にあるのは、常に楽し気な笑みを浮かべる智也の姿。すぐさまラウドな「Killing joke」に乗せて、メンバーも声を振り絞る中で昴も「行くぞ、ハイエナども!」とかみついていく。「力貸してくれとかダサい事言わへんけど、良いと思ったら付き合って!」と昴が観客に飾らない一言を吐露すると、その言葉に観客も一層火がついて一体感を生みだした。こうしたシーンもまた、対バンの場で光るRoyzのライブスタイルの1つだろう。
ボーカルのアカペラから突入した「クロアゲハ」は、ベースのスラップが効いた高揚感あるイントロからボルテージを上げるお馴染みの風景の中、杙凪はギターソロをアレンジしてスマートに披露。そして、“丸の内”からほど近いここ日比谷野外音楽堂でプレイした「丸の内ミゼラブル」の歌謡テイストな切なさが漂う中、時折吹く冷ややかな風が心地差を感じるのも野外ステージならではだ。
ブレイクを挟んで「KAMIKAZE」のイントロが流れ出す中、「2番手、Royzです。ぶちかましていきましょう!やることやりに来ました」と滾らせると、流麗な和旋律に乗せたバンドの未来に鋭いまなざしを向ける想いに胸を打たれた。“翼”をモチーフとするRoyzが、熱く“羽撃いて”“舞い踊れ”と歌うこの「KAMIKAZE」を野外の開放的な空間で耳にするとまた、ここに秘められた魅力が存分に映えるような気がした。
ラストスパートは、「お手を拝借」と「阿修羅」の破壊的なサウンドの中で頭を振り乱す観客の姿が痛快で、カオスな中で一際目を惹く公大のアバンギャルドさにも拍車がかかる。「生きてるか日比谷!」と煽り立てて一層白熱させた「Jack the Ripper」は、見事に音の洪水にまみれていく中、楽器隊が向き合って高速リフを奏で上げる様子が実にアツい。
「あとちょっとになっちゃった……! 最後まで遊んでください、よろしくどうぞ!」と、“こんな4バンドでやるなんて滅多にない”と話した豪華メンツが揃った今イベントでの時間へ名残惜しさも見せた。そこに続いた「AFTER LIFE」に込められた、儚くもリアルなメッセージを受け取りながら躍動感を増す客席に大きく“ハート”を示した昴の顔に浮かんでいたのは、ご満悦な笑みだった。
「今日は付き合ってくれてありがとうな、楽しかった! 俺たち、7月に新しい新曲を出すので、今日ライブ見てこの4人の続きが気になるなっていう人は確認してみてください。夏のツアーも回るんやけど、8月の後半にZepp Shinjukuでやります。しかも、なんでこんな日に言ったのかというと、今回のツアーは出来るだけ多くの人に来て欲しいなと思って……正直言うと、動員増やしたいなと思ってます!なんでペアチケットやります!遊びに来てください!いくぞ、日比谷!新しい仲間を増やしていきます」――昴
ここで、先日恵比寿LIQUIDROOMにて行われたSPRING ONEMAN TOUR「来雷行脚」のツアーファイナル公演にて期待を煽られていた、“続報”が遂に明らかとなった! 新たなリリースとツアーの発表に歓喜する中、ラストは現時点で最新のRoyzの意気込みを表した「RAIZIN」をぶつけた。ステージで全力を尽くすことを“死に場所を探している”という言葉で表しながら力強く届けていく中、天へ向けて掲げられたたくさんの手が、見事に希望を画にしているようでもあった。
25th maxi single「AMON」のリリース、SUMMER ONEMAN TOUR 「地獄京」がメインイベントとなるRoyzの夏は、“多くの人に見て欲しい”という思いが表れた試みがたくさん予定されている。その裏には、前進することへ迷いのない自信を垣間見ることも出来た。昴が言った「良い夏にしましょう」という言葉通り、この先に待ち受けるRoyzの近い未来が勝負の連続であろうとも、4人が堂々と勝ち気である限り何も案ずることはない。そんなことを感じさせてくれた、大空の元での堂々たるアクトだった。
レポート・文/平井綾子(Ayako Hirai)
写真/Kyoka Uemizo
己龍主催公演「我龍天青」
5月28日(日)【東京】日比谷野外音楽堂
【Royz セットリスト】
1.ANTITHESIS
2.Killing joke
3.クロアゲハ
4.丸の内ミゼラブル
-MC-
5.KAMIKAZE
6.阿修羅
7.Jack the Ripper
8.AFTER LIFE
9.RAIZIN
Royzが、SPRING ONEMAN TOUR「来雷行脚」のツアーファイナル公演を 5月22日 恵比寿LIQUIDROOMにて行った。“死に場所をずっと探し続けている”――これは、3月にリリースされたMaxi Single「RAIZIN」の一節だ。一見センシティブとも取れるワードを用いたここに、Royzというバンドが生きようとしている息吹と、覚悟を感じずにはいられなかった。それと同等の想いを意気込みに変えて回ったのが、ツアー「来雷行脚」である。
電脳空間に誘うようなSEに乗せてメンバーが登場すると、昴の「ようこそ死に場所へ」という一喝に続いてコールされた「KAMIKAZE」が、オープニングを飾る。各々のポジションにドンと構える堂々たる出で立ちで沸々とこみ上げる意気込みを刻み込んでいくと、ラウドな「THE RUST EMPIRE」に乗せてメンバーはもとより観客も躍動し、「LEON」ではヘッドバンギングをはじめとする“今まで”を彷彿とさせる爆発力を発揮する中、一際目を惹いたのは荒々しく吠えるもスマートな男気を惜しみなく感じさせていたステージ上の4人の姿だった。同時に、ここ数年間のもがきの中で強靭なマインドを掴み取ってきたハイライトを思い返させるような幕開けが、非常にエモーショナルに映る。
暗転から智也の力強いドラムが口火を切る中、ツアーファイナル公演開催の前に発表された「コンサート開催ガイドライン」の廃止を受けて、昴は「元に戻ったんじゃなく、一歩先のライブを皆さんとしようと思う」と力強く告げた。その言葉に続いた「INNOCENCE」は痛快で、「VIPERS」ではRoyzスティックの光も揺れ、想定したライブ感は想像のはるか上を行く威力で体現された。ムーディーな空気を纏った「奴隷金魚」から「丸の内ミゼラブル」の流れも見事で、一層洗練させた心地よいノスタルジックな世界観が広がった。さらに、和旋律を交えて麗らかに届けた「月ハ蜃気楼、遠ク」に続いた「DAYDREAM」では、“会いたい”という尊い希望を再確認するような空間に温かい空気が流れていた。
暗転を挟み、「カルマ」の冒頭で昴が歌い上げたロングトーンに胸を打たれたのも束の間、ここに込められたバンドを通して“生きる”ことを諦めなかった4人の計り知れない想いに目頭を熱くさせられた。「行くぞ東京!泣いても笑っても今日が最後、やるしかねぇよな!」と「Satisfy?」では公大もマイクスタンドを前方へと持ち出して率先して叫び、会場が一体となって中指を立てながら胸の内を吐き出すと、「阿修羅」では見事混沌としたフロアをソリッドなギターを響かせながらご満悦な笑みで覗く杙凪の姿もあった。「生きてるか東京!息してんのか東京!」と声を振り絞るように問いかけた昴が、「Jack the Ripper」で白熱したフロアに向かって「最高に生きてるって感じがするよ」とメッセージ。ボルテージマックスの中で披露した「Eva」は、まるで異空間へトリップするかのように儚くも得も言われぬ壮大さをもって突き抜けていった。
「今日も最後まで全身全霊、全力でやります。今日、ここで最後でもいいと思いながら生きるのは不器用な生き方かもしれない。でも、最高に楽しいな、生きてるなって感じてます。さあ、最高の“死に場所”へ共に行こう」――昴
演奏するメンバーが時折口角を上げながら、実に清々しい表情だったこと――これ以上の答えはないと噛みしめながら聴いた「RAIZIN」。“死に場所”という言葉がけっして悲観的な言葉や意味ではないと証明するかのように、全力を投じられる現状に充実感を覚えながら、それを楽しんでいる余裕すら感じさせる強さを見せた。こんな風にして、Royzは自ら必ず自分たちの財産となるものを見つけ、つかみ取っていくのだ。そんなバンドに未来がないなんて、絶対に言わせない。
アンコールでは、メンバーのMCや微笑ましい場面をところどころに挟みながら、レギュレーションが無くなった今だからこそ嬉しいラインナップを用意。ウォールオブデスが起こった「開眼」や、「ACROSS WORLD」では手をつないで大きくモッシュの波が揺れる情景の再来に胸を打たれ、歓声が上がった「鬼ト邪吼」ではステージへ詰めかける逆ダイブを何度も起こした。こうして、大合唱が起こった「ANTITHESIS」で締めくくるまで、実に全6曲を披露。そして、ライブの最後には「ちゃんと未来、用意してるんで!」と「詳細は近日解禁!続報を待て!」という言葉と共にメンバーがシルエットなった写真が映し出された。“近日”は明言されていないが、5月28日に日比谷野外大音楽堂にて行われる同レーベル所属の己龍主催による「我龍天青」への出演も決定しており、ここで情報をキャッチできることになるのだろうか?続報を待ちたい。
「生きてまた会いましょう」――昴
こうしてRoyzがフォロワーの心を躍らせ続けられるのも、彼ら自身の力で未来を切り開こうとしている意思と、それに必要なエナジーを滾らせている“今”があるからこそ。この日、最後の一瞬まで無意識に各曲から拾っていたのは“生きる”というワードだった。アップダウンな道のりを歩み続けてきたRoyzのドラマは、彼らが「この先へ行こうと」と望み、叫び続ける限り終わることはない。
レポート・文/平井綾子(Ayako Hirai)
-セットリスト-
M1.KAMIKAZE
M2.THE RUST EMPIRE
M3.LEON
M4.INNOCENCE
M5.Killing Joke
M6.VIPERS
M7.奴隷金魚
M8.丸の内ミゼラブル
M9.月ハ蜃気楼、遠ク
M10.DAYDREAM
M11.カルマ
M12.Satisfy?
M13.阿修羅
M14.Jack the Ripper
M15.Eva
M16.RAIZIN
EN-1. Autocracy~ワルツとナイフ~
EN-2. 開眼
EN-3. 0
EN-4. ACROSS WORLD
EN-5. 鬼ト邪吼
EN-6. ANTITHESIS